第1期 第18回医鍼連携研修を下記要領にて開催しました。
日時:2020年1月19日(日) 受付開始 9:10
場所:東京大学医学部附属病院 中央診療棟2 7階中会議室
カリキュラム
- 現代医学 : 画像診断の見方(単純レントゲン)
臨床実技(模擬治療)
- 中医鍼灸 : 疼痛疾患
- 現代鍼灸 : 慢性疼痛
- 経絡治療 : 自律神経症状
現代医学
今回のテーマは「単純レントゲン撮影〜読影の基礎〜」です。
X線の発見から現像技術の進歩の歴史の説明と特徴の説明から始まり、白く写る=濃度が高い=透過性が低い、黒く写る=濃度が低い=透過性が高い、という読影の際の前提の解説がありました。
「影絵」であるレントゲン画像を立体化して見るためには見る側が想像して補わなければならず、その工夫として様々な方向からの撮影方法があり、一つの方向から見てわからなくても複数の方向から見ることで明らかにされることがあるそうです。
撮影方向による見え方の違い、物体があるコンパートメントに水があると輪郭線が消える「シルエットサイン」など、レントゲンの特徴を踏まえて平易に解説していただけました。
各論の胸部X線画像では、正常な構造を理解していないと異常を見つけることはできないため、まずPA像・側面像を見ながら臓器の正常構造の説明があり、続いて読影の順序とポイントを学びます。
最後に プロジェクターで表示されたX線画像において普通ではない箇所はどこか、津田先生が研修生を当てて質問したところ、研修生はそれまでの講義内容を理解し、異常を見つけて答えられるようになっていました。
中医鍼灸
中医学においての疼痛疾患は「不通則痛・通則不痛」ということ。止まっている経絡系統を「疏通経絡」するためには、どの経絡が不調なのかと、経絡の走行場所を把握する必要があります。
中医の一般的な配穴のパターンは、標治(局所穴と循経穴)、本治(弁証穴)です。
局所穴は疼痛部位の特定で決定し、痛みを取り除く目的で使います。中医鍼灸の特徴である循経穴は循経弁証で決定し、本治で用いる弁証穴は臓腑弁証などを用いて決定します。
臓腑とは関係がない痛みの場合には経筋で考えることができるため、経筋の解説がありました。また、経筋病(運動器系愁訴)の治療とその特徴を教えていただきました。
後半は、モートン病の症状がある研修生が被験者となって模擬治療です。
横田先生からモートン病の治療を受けた経験がある研修生から治療前後の経過説明があり、続いて、当日受ける研修生が今までの経緯を説明したあとに模擬治療が始まりました。
治療中は横田先生から実証・虚証の違いの解説や、研修生との質疑応答が活発に行われました。最後に治療を受けた研修生から感想が聞けたことはたいへん参考になりました。
現代鍼灸
「慢性疼痛の病態と鍼灸」がテーマです。
最初に、痛みは感覚的要素と情動的要素がある心身反応であること、急性痛・慢性痛、部位別痛みの原因と治療場所・主な機序などの解説がありました。
以前の講義でも出てきた「病的疼痛の悪循環モデル」の図を元に、慢性疼痛への理解を深めます。
たとえば腰痛を理由に欠勤が長期化している患者群の脳機能障害状態では、前頭前野が代謝低下、扁桃体・海馬などが代謝亢進し、思考や行動、情動に影響を及ぼします。また、腰痛に対する不安や動くことへの恐怖が強まると下行性抑制系が正常に働きづらくなるなど、痛みを過剰に認識するシステムが組み上げられるそうです。このため、悪循環モデルをどこかで断ち切る必要があるとのこと。
慢性疼痛に対する鍼治療では、下行性疼痛抑制系の賦活を目的とした鍼通電や、内因性オピオイドペプチドの分泌を誘発する効果的な周波数設定などの解説がありました。
その後、頭部への刺鍼・通電の実習を行いました。このパルス刺激で頭部に渦巻くような刺激感があるそうで、研修生はペアで刺鍼法や受けた時の感覚を確認しあいました。
経絡治療
テーマは、自律神経症状の模擬治療でした。
自律神経症状への治療方法の復習をしたのちに、相澤先生の模擬治療がはじまりました。
1人目の患者役の研修生は、1週間前に一時的に声が出なくなり、その後空咳が出るようになったそうです。
検脈ではやや数で緊軟脈、肝脾で特に緊強く、本治は68難本治法から自律神経治療として肝肺水土穴が使われました。主訴の空咳や梅核気に対する胸鎖乳突筋の見方や、消化器所見の確認方法などの解説とともに治療が実施されました。
2人目は逆流性食道炎があるという研修生です。
検脈をしたところ緊脈はなく肺脾の虚ということで体質的脾虚タイプと捉え、自律神経症状への本治ではなく、69難本治法の肺虚証として、肺脾土金穴にて本治を実施しました。逆流性食道炎の標治法など、1人目の患者役とは異なるバリエーションの身体所見の解説と治療を見ることができました。
模擬治療中には、患者さんへのアドバイス、治療はどのくらいの頻度で行うのが効果的か、などの質問があり、それらについての回答が相澤先生からありました。