第1期 第17回医鍼連携研修を下記要領にて開催しました。
日時:2019年12月15日(日) 受付開始 9:10
場所:東京大学医学部附属病院 中央診療棟 7階中会議室
カリキュラム
- 現代医学 : 皮膚科学概論
- 中医鍼灸 : アレルギーと中医学(花粉症、喘息、皮膚炎など)
- 経絡治療 : 自律神経症状
- 現代鍼灸 : 顔面神経麻痺の鍼治療(表情筋へのアプローチ)
※ 現代医学…よしき皮膚科クリニック銀座 吉木伸子先生、中医鍼灸…誠心堂薬局 大谷孝枝先生
現代医学
よしき皮膚科クリニック銀座 吉木伸子先生による、皮膚科学概論です。
肌の構造と機能を解説いただくなかで、よく化粧品などに使用されている成分の説明がありました。日本人の80%が自称敏感肌であると言い、これは肌のバリア機能には大切な脂質であるセラミドを洗い流し過ぎている生活習慣からくるものだそうです。
また、メディアでは語られづらいコラーゲンの効果のお話、機序がしっかり分かっていない「かゆみ」の治療のお話などもしていただけました。
アトピー性をはじめとする様々な皮膚炎、皮脂欠乏性などの様々な湿疹など、多岐にわたる皮膚疾患の概要と治療を写真を示しながら解説いただいたほか、漢方薬を使用した治療での改善症例や、薬剤・市販薬・市販保湿剤の注意や紹介がありました。
続いて、美容皮膚科領域の解説もありました。「肌は内臓を写す鏡」。東洋医学的治療も行われている吉木先生ならではのお言葉で、見えるところだけきれいにするのではなく生活習慣から身体全体を変えていく必要を語られていました。
中医鍼灸
誠心堂薬局 薬剤師・鍼灸師 大谷孝枝先生による「アレルギーと中医学(花粉症、喘息、皮膚炎など)」の講義です。
アレルギーの免疫システムの西洋医学的解説に、中医学としての解釈を重ねての解説です。アレルギーの原因は邪気過剰(実)または正気不足(虚)が考えられるとのこと。
免疫には肝・心・脾・肺・腎、五臓すべてが関係し、喘息、皮膚疾患を例に挙げて病因病機と標治穴の解説をしていただきました。
また、実証(風熱、風寒、湿熱、血熱、気滞血瘀)、虚証(肺脾気虚、血虚生風、肝腎不足)それぞれの症状と治法を、漢方薬・鍼灸の各側面から教えていただきました。
同じ「疏風清熱利湿」のための漢方薬でも、じゅくじゅくしているかゆみには消風散(清熱除湿)、むくみが強い場合には越婢加朮湯(利水消腫)、など、漢方薬の性質について詳しく教えていただきました。
実習は、横田先生のデモの後、曲池、百虫窩、豊隆、陰陵泉への刺鍼を行いました。
経絡治療
相澤先生による自律神経症状の講義でした。
はじめに経絡治療で使われている自律神経症状の治療法である「膻中の病」の治療と、「背部神経点灸」についての解説です。「膻中の病」の治療は北里大学東洋医学総合研究所で昭和50年代には実施されていたとのこと。当時から「背部神経点灸」も多くの患者さんが受けられていたということです。
また、本治で使用する「肝肺水土穴」は相克関係である肺と肝を同時に治療する方法ですが、その方法ができた背景と経緯について教えていただきました。
自律神経症状では、本治を重点的にすること、患者さんへの説明がポイントとなるとのこと。
胃腸型、心肺型、血管運動神経型、うつ型、その他と分類し、各型の症状、所見と標治のコツの解説がありました。
実習では、講義に出てきた所見の確認、脈診をして本治を入れて脈の変化をみました。
特徴的な緊脈が出ていた研修生の脈を、他の研修生が検脈をして脈の感覚を確認したりしました。
現代鍼灸
粕谷先生による「顔面神経麻痺の鍼治療ー表情筋へのアプローチー」の講義です。
麻痺の原因として多くを占めるベル麻痺・ハント症候群には、神経損傷と絞扼性損傷の二つの要素があり、神経損傷の再生過程で過誤再生が起こるとその後正しく再生されることはなく、治療法を誤ると後遺症が出てしまうことが紹介されました。これは、従来の考え方と大きく異なる点とのこと。
後遺症の病的共同運動の発生機序には、四肢筋の神経と表情筋の支配神経である顔面神経の神経幹構造の違いが関係するとご説明いただきました。
また、発生直後に予後良好タイプと不良タイプを見極めるための40点法麻痺スコアの付け方を、実際の映像の中で見るべきポイントを教えていただきました。
実技では、急性期で実施する筋の揉捏法、眼瞼挙筋を用いた開眼運動を行いました。会場を粕谷先生が巡回し、研修生は実際に表情筋の揉捏をしてもらい圧や手の当て方を確認していました。