第1期 第14回医鍼連携研修を下記要領にて開催しました。
会場:東京大学医学部附属病院 中央診療棟2 7階中会議室
日時:2019年9月15日(日)9:30~16:50
カリキュラム:
- 特別講座(現代鍼灸)…診察から評価 実技(第12回分)
- 臨床各論共通テーマ(現代医学・現代鍼灸・中医鍼灸)…疲労・倦怠感
- 東洋医学的な考え方について系統的な講義…中医鍼灸(総論) 問診
現代医学
疲労倦怠感+なんらかの疾患をもっている場合、その疾患に気づいて西洋医学につなげられるよう、各疾患の概要、検査、問診や身体所見の注意すべき点、red flag をお伝えいただきました。
重症筋無力症、貧血、肝臓疾患、内分泌疾患、代謝性疾患、感染症、悪性腫瘍、精神疾患、慢性疲労症候群など、多岐にわたる疾患についての講義がありました。
特に、慢性疲労症候群は西洋医学でも治療法は確立されておらず、鍼灸に期待されるということでした。
中医鍼灸
総論は前回に引き続き弁証論治の問診についてです。
体格、嗜好、食欲、血圧、体温、既往症について、各項目で見られる所見が意味するところの説明がありました。横田先生ご自身を例にした、体格についての実例を交えた解説はとてもわかりやすく印象に残る内容でした。
各論の疲労倦怠については、「鍼灸院に来る患者さんは疲れていて、疲労倦怠に該当しない人はいない」「全身疲労には標治穴がなく、身体全体で捉える」とのこと。
中医学的な疲労倦怠の原因と治療穴についての解説があり、その後のデモでは全身の気機調整の経穴への刺鍼でした。これらの経穴は以前経絡治療の講義であった「全身調整穴」と重なるものも多くあると、横田先生の解説の中で言及されておられました。
現代鍼灸
今回は、第12回に経絡治療を2コマを実施した分の代替えで現代鍼灸が2コマあります。
前半は疲労感、後半は医療連携における重要点についてです。
慢性疼痛や疲労感には脳の機能異常が前提にあり、ストレスフルな状態が続くと前頭前野の機能低下ならびに海馬や扁桃体など情動に関わる部分の過活動が起こり、その結果疲労感のみならず他にもさまざまな不定愁訴をひきおこすというメカニズムの説明がありました。
これらの状態を改善するためには鍼灸治療とあわせて、ストレスを逃すために患者さんが継続できる対策を提案することが重要であり、エビデンスレベル・推奨度を絡めてのセルフケアの解説がありました。
慢性疲労に対する鍼灸治療の論文紹介につづき、デモでは脳の血流と関連している顔の経穴や上頸神経節への刺鍼、足底神経を刺激して足が温かくなる箇所への台座灸を実施しました。
後半は、診察から評価についてです。
医療連携における重要な点は、「共通言語としての現代医学的知識」「ニーズに応えられる臨床力」「コミュニケーション」であり、それらを実現するための講義が行われました。
「出血傾向の患者への施術は?」「人工関節周囲への施術は大丈夫ですか?」など、他職種合同カンファや医師からよくある質問には、自らの経験を元にして回答するのではなく各ガイドラインに沿って回答する必要があることが説明されました。
また、鍼灸臨床における診察の目的は「診察の主な目的は病態の把握にある。問診や各種理学検査により病変部位を推察し、病態把握につとめ、治療計画を立てる」こと、「生命を脅かす危険な疾患を鑑別する」ことであり、それを実現するための問診やチェック法、検査法、red flag の紹介がありました。
red flag を見つけた時に現代医学へつなぐためのご高診願いの書き方についても教えていただきました。